むずむず脚症候群とは

むずむず脚症候群

むずむず脚症候群(RLS:Restless Legs Syndrome)は、脚の内部に「むずむず」「ピリピリ」「虫が這うような」不快な感覚が生じ、じっとしていられずに動かしたくなる衝動にかられる神経疾患のひとつです。
とくに夕方から夜間にかけ、また安静時に強く現れ、睡眠の妨げや強い苦痛につながります。

現在、むずむず脚症候群であるとされる方は約4%と言われており、およそ25人に1人の割合で、決して珍しい病気でありません。
10代~20代で発症することが多く、男女比では、女性が男性の1.5倍~2倍、なりやすいという報告があります。

むずむず脚症候群は、症状の説明が難しく、周囲に理解されにくいため、「気のせい」「自分のせい」と感じてしまう方もいらっしゃいます。
しかし、むずむず脚症候群は神経疾患であり、さまざまな治療法もあります。
「夜、横になるのが怖い」「毎晩、眠ることに苦痛を感じている」という方は、お早めにご相談ください。

むずむず脚症候群の症状

以下のような症状がある場合、むずむず脚症候群の可能性があります

  • 脚に「むずむず」「ピリピリ」「ジンジン」といった違和感がある
  • 安静にしていると悪化し、動かすと一時的に楽になる
  • 主に夕方から夜間、就寝時に症状が強まる
  • 脚を動かさずにはいられず、寝つけない、眠りが浅い
  • 電車・映画館・会議など、長時間座る場面で落ち着かない

など

症状は多くの場合、両脚にあらわれますが、重症化すると腕や背中に広がることもあります。
また、本人は「足を動かしたい衝動」をうまく説明できないことが多く、周囲から理解されにくいという悩みも伴います。

夕方から夜間、就寝前や就寝中に強くなるためことから、眠りにつくことが難しくなり、途中で何度も目が覚めるなどの睡眠障害を引き起こします。
こうした状態が続くことで、日中の眠気や集中力の低下、倦怠感などに悩まされることも少なくありません。

また、この病気の方に多くみられるのが「周期性四肢運動」と呼ばれる症状です。
これは眠っている間に脚や腕が自分の意思とは関係なく周期的にピクッと動くもので、20〜40秒おきに繰り返されることが多く、本人は自覚しないこともありますが、これも睡眠の質を大きく低下させる原因となります。

むずむず脚症候群の原因

むずむず脚症候群には、はっきりとした原因がない特発性と、何らかの疾患に伴って発症する二次性の2つのタイプがあります。

特発性の原因

特発性の場合は、明確な病気が背景にないものの、脳内のドパミン神経系の機能異常が関係しているとされています。
鉄不足によってもむずむず脚症候群の症状が認められることがありますが、これは鉄がドパミン代謝に必要なためです。
家族内に同様の症状をもつ人がいることも多く、遺伝的要因が強く関与すると考えられています。
特発性の場合、若い頃から症状が始まり、長期間にわたり持続する傾向があります。

二次性の原因

二次性の場合は他の病気や状態に伴って発症し、代表的なものに鉄欠乏性貧血、慢性腎不全で透析中、妊娠(とくに妊娠後期)、糖尿病、末梢神経障害、パーキンソン病などがあります。
また、一部の抗うつ薬や抗ヒスタミン薬などの薬剤によって誘発されることもあり、原因を特定し対処することで症状が改善することもあります。

むずむず脚症候群の診断・治療

むずむず脚症候群の診断では、まず詳しい問診が重要です。脚の不快感が安静時に出現し、動かすと軽快し、とくに夕方から夜間に悪化する、などの特徴があるかを確認します。
そのうえで、鉄欠乏や腎機能の異常などの二次性原因を調べるために血液検査を行うことがあります。
また、必要に応じて、睡眠中の脚の動きを調べる終夜睡眠ポリグラフ検査などが行われることもあります。

むずむず脚症候群と診断されましたら、当院では、症状の重症度や原因を見極めたうえで、薬物療法・生活指導などを組み合わせて治療を行います。
精神的な不安やストレスも悪化要因となるため、心療内科・精神科のアプローチが有効です。

薬物療法

むずむず脚症候群の薬物治療では、まず脳内のドパミンの働きを補う「ドパミン作動薬」が用いられます。
プラミペキソールやロチゴチンといった薬が代表的で、脳内の興奮性の神経伝達物質に関与することにより、脚の不快感や動かしたい衝動を軽減する効果があります。

また、神経の興奮を抑える「抗てんかん薬(ガバペンチンエナカルビルなど)」も使用され、睡眠障害の改善にも効果があります。
鉄欠乏がある場合は鉄剤を補うことで症状が改善することもあります。

薬剤の選択や使用量は症状の程度や生活状況に応じて調整されるため、医師と相談しながら適切な治療を継続することが大切です。

生活習慣の改善

むずむず脚症候群の治療では、薬物療法に先立って生活習慣の改善が非常に重要です。
とくに睡眠リズムを整えることが大切で、毎日同じ時間に寝起きする習慣をつけることで、神経系の過敏さを軽減できます。
また、カフェインやアルコール、喫煙は症状を悪化させることがあるため、これらの摂取を控えることが推奨されます。

日中の適度な運動も有効ですが、就寝前の激しい運動は逆に症状を悪化させることがあるため注意が必要です。
さらに、就寝前には入浴やストレッチなどで脚を温めたり、リラックスする時間を設けたりすることも効果的です。
こうした生活習慣の見直しによって、症状が軽減されるだけでなく、薬の効果を高める土台にもなります。