不安障害とは

不安障害

不安障害とは、実際にはそれほど危険ではない状況や対象に対して、過剰な不安や緊張を感じてしまう精神的な状態の総称です。
不安は誰にでもある自然な感情です。
しかし、不安や心配が頭から離れず、仕事や学業、家事などに専念することができなくなってしまうなど、日常生活に支障をきたすほど強く、持続的になる場合には「不安障害」という病気と診断されます。

不安障害にはいくつかのタイプがありますが、なかでも全般性不安障害(GAD)および社交不安障害(SAD)は、日常生活に深く関わるため、悩んでいる方が非常に多いのが特徴です。
いずれも「性格のせい」「気のせい」とされがちですが、れっきとした治療可能な疾患です。
このほかパニック障害なども不安障害のひとつです。

当院では、不安の背景にある心理や思考のクセに丁寧に向き合いながら、薬物療法と精神療法を組み合わせて、患者さまの回復を支援しています。

全般性不安障害(GAD)の症状

GADでは、家庭のこと、健康、仕事、人間関係、さらには自然災害や紛争など、様々な問題を対象とした「止まらない心配」が特徴です。
その心配の程度が常軌を逸していたり、本人が「考えすぎだ」と分かっていてもやめられない状態が続いたりします。
発症は思春期から中高年まで幅広くみられます。

以下のような症状がみられた場合、全般性不安障害かもしれません

  • ささいなことでも「最悪の結果」を考えてしまう
  • 自分が何か重い病気ではないかと心配になる
  • 家族が事故にあうのではないかと不安になる
  • 漠然とした不安や心配が常に頭から離れない
  • 不安の対象が次々に移り変わる
  • 不安により集中できない、眠れない
  • 発汗や震え、動悸など身体の緊張が強い
  • 肩こりや頭痛、胃の不快感などが生じる

など

社交不安障害(SAD)の症状

SADは、「他人にどう見られているか」が強く意識される場面で極度の不安が生じる障害です。
人前での発表だけでなく、初対面の人との会話や、電話対応、会食など、日常的な対人関係の場面でも症状が現れます。
周囲には「内向的」「緊張しやすいだけ」と思われがちですが、本人にとっては非常につらい状態です。

以下のような症状がみられた場合、社会不安障害かもしれません

  • 人前で話す、食事をする、注目される場面で強い緊張や不安がある
  • 人前で電話をしたりものを書いたりするときに不安や恐怖を感じる
  • 周囲に「変に思われるのでは」と過剰に気になる
  • 発表や会議などの場面を避けようとする
  • 緊張のあまり手が震える、声がうわずる、赤面、発汗などの症状が出る
  • 不安を避けるために人付き合いを制限する

など

不安障害の原因

不安障害の原因は一つではなく、複数の要因が関与すると考えられています。
まず、脳内の神経伝達物質(とくにセロトニンやノルアドレナリン)の働きに偏りがあるとされ、不安を抑える仕組みがうまく働かなくなっていると考えられています。
さらに、過去の体験や性格傾向(心配性・完璧主義・他人の評価を気にしやすいなど)も影響します。

また、育った環境や過度のストレス、挫折体験、家庭内の緊張などがきっかけで発症するケースもあります。
発症後も、「また不安になるのでは」という予期不安や、「人と会いたくない」といった回避行動が悪循環を生み、症状を慢性化させてしまいます。

不安障害の治療

治療には大きく薬物療法と精神療法があります。
当院ではこれらを組み合わせ、患者さま一人ひとりに合ったオーダーメイドの治療を行っていきます。
不安障害は長期にわたって影響する疾患ですが、継続的な治療により大きく改善することが期待できます。

薬物療法

不安障害に対しては、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬が有効とされています。
GAD・SADともにSSRIが第一選択薬とされ、脳内の神経伝達のバランスを整える作用があります。
効果が出るまでにある程度の期間を要するため、必要に応じて、不安を引き起こす場面で短期的に抗不安薬を併用する場合があります。

薬物療法は症状の重さや生活への影響度に応じて調整し、漫然とした長期使用は避け、定期的に見直しながら進めていきます。

認知行動療法(CBT)

不安障害には、考え方のクセ(認知の偏り)が強く関与しています。
「失敗したらどうしよう」「人に変に思われる」といった過剰な思い込みを見直し、それまでとは異なった捉え方・考え方、現実的な考え方に修正していくという訓練を行います。

また、苦手な場面に少しずつ慣れていく「段階的曝露(エクスポージャー)」も効果的です。
さらに日常のセルフケア(呼吸法・マインドフルネス・睡眠衛生など)についてもアドバイスいたします。