パニック障害とは

パニック障害

パニック障害とは、突然、強い不安や恐怖に襲われる「パニック発作」を繰り返す病気で、不安障害のひとつです。
発作中は、心臓が激しく鼓動したり、息苦しくなったり、「このまま死んでしまうのでは」と感じるような、非常に強烈な身体症状と不安が現れます。
この発作は予測できず、特別なきっかけがなくても起こることがあります。

さらに、「また発作が起きたらどうしよう」という強い「予期不安」が続き、発作が起きた場所や状況を避けるようになる「広場恐怖(外出や乗り物などへの恐怖)」を伴うこともパニック障害の特徴です。
その結果、外出ができなくなるなど、日常生活に大きな影響を及ぼします。

パニック障害は20代~30代で発症することが多いとされ、男性よりも女性が多く、その比率は約2倍となっています(現在では男性も増加中です)。
日本人の生涯有病率は、およそ0.6~0.9%という報告もあります。
発作の激しさゆえに「心臓の病気かもしれない」と救急外来を受診することも多く、適切な診断と治療が行われないまま不安を抱え続けている方も少なくありません。

パニック障害の症状

パニック障害の中心的な症状は、「繰り返されるパニック発作」です。
以下のような症状が急激に現れ、数分〜数十分程度でおさまるのが特徴です。

  • 心臓がドキドキする、激しい動悸を感じる
  • 息苦しさ、呼吸困難
  • 胸の痛みや圧迫感
  • めまい、ふらつき、気が遠くなる感覚
  • 手足のしびれやふるえ、汗が出る
  • 非現実感、自分が自分でないような感覚
  • 死ぬのではないかという強い恐怖
  • 発狂するのではという感覚

など

これらの発作が繰り返されるようになると、次第に「また発作が起きるのではないか」という不安が強くなり(予期不安)、電車やバス、高速道路、橋の上、人混み、会議室、映画館、美容室など、逃げにくい・助けを呼びにくい場所を避けるようになります(広場恐怖)。

このような回避行動が進むと、社会生活に大きな支障をきたすようになり、「パニック障害」として診断されます。
なお、発作があっても予期不安や広場恐怖を伴わない軽症例もあります。

パニック障害の原因

パニック障害の原因は、まだ完全には解明されていませんが、いくつかの要因が複雑に関係していると考えられています。

「不安」や「恐怖」は私たちの身体にもともと備わっている正常な感情で、外部からの様々な情報が視覚や聴覚などを通じて伝達され、危険があると判断された場合に生み出されるものです。
それが自律神経を刺激し、動機や発汗、震えなどの症状も現れるようになります。

パニック障害は、脳内の「不安」や「恐怖」に関係する神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリンなど)の働きに乱れがあると、症状が現れるのではないかと考えられています。
過度のストレス、身体的な疲労、不規則な生活、ホルモンの変化、事故や手術、出産などが発症の引き金になることがあるとも言われています。
また、性格傾向として、「完璧主義」「心配性」「まじめで責任感が強い」タイプの方に多く見られる傾向があります。

一度発作を経験すると、「また起きるのでは」と脳が過敏に反応するようになり、さらに発作が起こる、という悪循環に陥りやすくなるため、早期の診断と治療が重要です。

パニック障害の治療

パニック障害の治療では、「精神療法」「薬物療法」「生活習慣の見直し」の3つを組み合わせて行います。
焦らず、段階的に治療を進めることで、多くの方が社会生活を取り戻すことができます。

心理療法(認知行動療法)

パニック障害に最も効果があるとされているのが、認知行動療法(CBT)です。
発作への過剰な不安や、「この場で倒れるのでは」といった誤った認識を修正し、不安を引き起こす状況にも少しずつ慣れていく訓練を行います。
段階的な「曝露療法」や「呼吸法のトレーニング」なども取り入れ、予期不安や回避行動を減らしていきます。

薬物療法

薬物療法では、抗うつ薬(SSRIなど)が第一選択として使われます。
これにより不安の感受性を下げ、発作の頻度を減らす効果が期待できます。
即効性はないため、数週間〜1か月ほどかけて効果が現れていきます。
また、必要に応じて抗不安薬を短期間使用することもあります。

症状が安定すれば、薬を徐々に減らしていくことが可能です。
副作用や薬の使用に不安がある方には、医師が丁寧に説明しながら治療を進めますので、ご安心ください。

生活習慣の見直し・セルフケア

睡眠不足や過労、不規則な生活は、発作を引き起こしやすくします。
規則正しい生活リズムを整えること、適度な運動を取り入れること、カフェインやアルコールを控えることも、治療の一環です。
また、「自分で発作を乗り切れた」という成功体験を積み重ねることも、回復への大きな一歩となります。